エピソード82:UFO 騒ぎ

  2022108日の早朝、まどろんでいた私は父の声で起こされた。「起きちゅうかえ?UFO が飛びゆうで!」とても日常会話とは思えん。私が起きるより早く、イビキをかいていたはずの母がダダダとベランダに走った。「ほら、あれ見て!さっきからずっと飛びゆう」はたして真っ暗な空を見上げると、ぼんやりした白い光が不自然な動きを繰り返していた。スーッと斜めに降りたかと思いきや、急に向きを変えて猛スピードで浮き上がる。「さっきはすぐそこまで来ちょったで」父が興奮しながら言う。まあでも人間とは、不可思議なものを見ると何らかの理屈を付けたがる習性があるらしい。誰かがライトで照らしゆうがやないが?だの、ドローンとか飛行機かなんかやない?だの。しかしライトで照らしているにしては光の軌跡が見えないし、第一こんな早朝から空を照らす目的が考えつかない。それにあんな急角度で向きを変えたり急上昇するのは、とてもドローンや飛行機の動きではないぞ。とりあえずスマホで写真や動画を撮ってみたが、後で見返すとうっすらとしか写っていなかった。「いやあ、あんなが生まれて初めて見たねえ♡」大感激する父を横目に、私はあくびをしつつ布団へと戻って行った。

 数日後。何気なく高知新聞のTwitterを見て、思わず声をあげた。先日のUFOの正体が分かったらしい。いよいよ未確認飛行物体が地球に襲来してきたか⁉︎ワクワクしながら記事を読み進めた私、意外な正体に拍子抜けした。あれは飛行物体でもなんでもなく、長浜にある競馬場でやってるサーカスのパフォーマンス用サーチライトだと!気象条件が重なって雲がスクリーンの役割をし、空に照らされるライトをいかにもそれらしく見せたんだってさ。これに一番がっかりしていたのは、もちろん一番喜んでいた父。まあ古希を過ぎても好奇心旺盛なのは良いことだ。っていうか、Twitterはおろか、インスタやFacebookにも上げてた私が、本当は一番がっかりしてるのかもしれない。こうして我が家のUFO騒ぎは幕を降ろした。幽霊の正体見たり枯れ尾花かあ、チキショー!




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