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エピソード30:番外編・躁と鬱②

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  ジェットコースターの真上に来たら、あとは落ちるだけ。ものすごい重力には抗えず、真っ逆さまに落ちていく。自分の力ではどうにもならない、これが双極性障害の「うつ状態」。よく『うつ病?甘えとか怠けなんじゃないの?隣に1億円の札束置いた途端に治るんでしょ。』とかいう誤解や偏見があるんだが、甘いのはそっちの方だ。そもそもうつ状態に陥ったら、隣に置いてある1億円の札束にすらたどり着けない。  鉛の鎖にがんじがらめにされ、さらにコールタールの沼に沈められているかの様に重く動かない身体。その上あらゆる箇所に痛みを感じる。目も開かない。呼吸するのがやっと。頭は灰色の綿が詰まったかのように朦朧とする。これがうつだ。少し上向きになると、今度は自分の些細な欠点を責めまくる。生きていたって仕方ない。いるだけで迷惑な人間なんだ。そんなことばかり頭に巡る。  ここで考え方のクセをうまくコントロールして薬を服用すれば完治するのが、いわゆる「うつ病」。しかし私の「双極性障害」はうつ病と異なり、一生気分の波に翻弄されてしまう。波を穏やかにする薬をずっと飲み続けなければ、生活すらままならない。少しのストレスで容易に崩れてしまうため、毎日が綱渡りだ。  大学在学中に発症したので、もう人生の半分を双極性障害と付き合っている。結局大学は中退した。貯金は失った。人は遠ざかって行った。仕事はできなくなった。それでも私は『今日はお風呂に入れた』『ひとりで買い物に行けた』という日常のささやかなことに喜びを感じながら生きている。

エピソード29:番外編・躁と鬱①

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  朝5時。1日が始まる。朝のうちは気分がいいし、体もよく動く。体重を計りため息をついたら、朝食。お腹は空くから具合は悪くない。シャワーを浴びて着替え。気分が乗ったらお化粧。そしてスケジュール帳をチェックし、執筆活動に入るーー。  …なあんて、他人のどうでもいい1日など、ホントにどうでもいいと思うけど。ここまで来るのに何年かかったか ⁉︎ 大学時代に「双極性障害」を発症し、その後5年間引きこもった私にとっては、すばらしい進歩なんですよ♪  「双極性障害」ーー以前は「躁うつ病」と呼ばれていた、この病気。異様にハイになる「躁状態」と、ドーンと落ちる「うつ状態」を繰り返す。名前が似てる「うつ病」とは全く違う病気で、完治はしないらしい。こんなのに当たった(?)私。なぜ宝くじに当たらないのか ⁉︎  たぶん大勢の人が想像する「躁」って、快活にはしゃぎ回って愉快なキャラになる、みたいな感じか?いんやいんや、そりゃ大間違い!私の躁はこうだった。  ・学生時代、サークルの会議中に激怒して机や椅子を蹴り倒す  ・合宿中に抜け出し、夜中水門に駆け上がって騒いでいる所を取り押さえられる  ・道ですれ違っただけの全然知らない人に話しかけまくり、握手してサヨナラ  ・とにかく行動的になり、夜中までバリバリ作業→寝なくても平気  ・金使いが荒くなり、ひと月に何十万円も使い込む→カードの請求がすごいことに  ・大胆にも朝お酒を飲んで出かける→そのまま授業に出る  ・外出先でケンカ売ったり、トラブルを起こしまくる etc… これはオカシイと周りが気付く頃には、もう手遅れ。ワァワァ騒ぐ私はその後、地獄のうつ状態へと突き落とされるのだった。〈続く〉

エピソード28:海

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  海開きとともに、本格的な夏が始まる。県土の半分が太平洋に面した高知県。県民誰しも、オリジナルの遊び場を持っているのでは?海水浴に磯遊び、潮干狩りに釣り、そしてマリンスポーツ。いくらでも遊び放題だ。  小学生の頃はアウトドア好きの両親に連れられて、毎週のように海や山を遊び回っていた。週休2日ではない頃のこと。日曜日が来るのをまだかまだかといつも待ちわびていた。砂浜を見ると海に入りたくなる私と弟。もっとも弟は泳げないため、溺れかけた(!)のを助けに行ったこともある。弟の頭が浮いたり沈んだりしているのをのんきに見物していたのは、お花畑の我が両親。次沈んだら助けに行こうと、ゆったり構えていたそうだ。何やってるんだ(呆) ⁉︎ 磯では潮溜まりにいるイソギンチャクやアメフラシの類を、棒でつつきまわるというイタズラをして、胸をスッとさせた。あれ、結構爽快ですよ(イジワルな私)♪季節になると岩場にくっついている「ニナ(貝)」を採り、家で湯がいて食べた。時々ヤドカリが混ざってたりして。今ではほとんど採れなくなりましたね。  ある年のこと。いつものように両親と私、そしてペットのニワトリ(!)と、磯遊びをしに某海岸を訪れた(ニワトリを連れて行くか ⁉︎ )。すると先客がいる。なんと、身体中にお絵かきをしていらっしゃる(←ボカした表現)御一行様のプライベートビーチになっているではないか!その数20人あまり。もうわき目もふらず一目散に引き返した。結局海では遊べないわ、ニワトリは乗り物酔いをし顔面蒼白でグッタリするわで、せっかくの楽しい気分がだだ下がり。その日は哀れなニワトリを介抱するだけで終わり(悲)、忘れられない1日となったのはいうまでもない。