エピソード101:仙台にて

  新年度が始まった。新たな気持ちで生活がスタートする。新入学、就職、環境ががらりと変わる人もいるだろう。今回は少し私の思い出話にお付き合いいただきたい。

 かれこれ20ウン年前、私は大学入学のため高知から仙台市へと旅立った。大学の決め手は専攻に「こども文化」というひらがなが含まれていたこと。ただこれだけで進学先を決めるなんて、制服が可愛いからと高校を決める中学生と変わらん。ともかく無事に合格を果たし、初めての東北暮らしとなった。

 まず体感したのは人の多さである。仙台市は政令指定都市で、人口は100万人を超える。通勤・通学する人を含めた昼間人口はより多く、行き交う人の群れに巻き込まれそうになった。スーツの上にコートを羽織ったサラリーマンの群れも初めて見た。地下鉄には恐怖さえ感じ、初めての自動改札には戸惑った。あとは当時流行っていたコギャルがいたことにはたまげた。駅の前の地べたに座り、金髪ガングロミニスカルーズで化粧しまくっていた。実在するんだと感動すら覚えたもんだ。

 学校は寮生活だったので、暮らすには苦労しなかった。みんなほぼ東北地方の出身者である。初めて見る(珍獣か?)東北の彼女達。皆肌色が紙よりも白く、ワタシなんか原住民みたいだった。しかも誰も「ズーズー弁」なんて喋っておらず、綺麗な標準語。仕方なく(?)私も標準語を真似して話すようにした。せっかく土佐弁で喋っちゃる!なんて意気込んでいたのに、急に恥ずかしくなったのだ。東北の人はみんなおっとりして気立が良く、情が深かった。

 寮では新入生歓迎会が盛大に開かれ、1年生は「寮体操」の披露、上級生は数々の出し物で盛り上がった。実はこの新歓パーティー、上級生からのドッキリが至る所に仕掛けられているのだ。以下ネタバレ→①門限・点呼などは全てウソで実際には無い・②「寮体操」もウソ八百で存在しない・③極め付けは4年生が新入生に紛れ込んでいるという大ドッキリ。新入生代表として挨拶する中、「ゼミのテーマが〜」「卒論が〜」という言葉を散りばめ暴露、というトンデモなものだった。

 今思えば古き良き時代だったのかもしれない。あれから仙台は震災に遭い、街は大きく変わった。あれ以来会っていない寮生たちは、元気にしているだろうか。


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