エピソード77:日曜市

 『にちよういち』という絵本がある。高知市出身の絵本作家、西村繁男さんの作品だ。もう40年以上も前に作られたものだが、今でも人気のあるベストセラーだ。主人公は「あつこ」という女の子と、そのお婆さん。全編を通して土佐弁の会話で綴られており、なんだか懐かしい気分になる。この絵本、私の大のお気に入りで、県外出身の友人にも勧めまくったほどだ。

  さて、この日曜市。これは高知県の誇る一大観光アイテムだと思うぞ。ショッピングとアクティビティ、それにサイトシーイング。全ての要素を兼ね揃えているではないか。ひとたび足を踏み入れれば、そこはディープなザ・土佐だ。お婆やお爺、おんちゃんおばちゃんが操るネイティブな土佐弁スピーキングを生で聞けるうえ、「よっしゃ、これも持ていき!」などの気前の良い土佐人気質も思う存分味わえる。多種多様の野菜や果物が並ぶ様は眺めるだけでも楽しいし、芋天や冷やしあめなどを片手に強烈な古漬けの香りを浴びるのも、また乙なものだ。テイクアウトはもちろん田舎寿司。いやあ、えいねえ♡

 ところで、日曜市といえば。昔、毎週のように「今日は僕の誕生日!お花を買うて行って~」って言う名物おんちゃん、おったでねえ?おんちゃんの言うことが本当やったら、今頃はすごい歳になっちゅうはずやけんど。あんなのどかな時代が懐かしい。あと、高知城に近い方では、植木の松とか庭石を売りゆう。私が子どもの頃はニワトリまで売りよった。しかし、日曜市に来た人が、「お、こりゃえい石があるよ!ひっとつ買うて行こうか」とか、「ちょっと綺麗なニワトリがおったき買うて来たで~」なんてことになるがやろうか?一体誰が買うのか、あれは日曜市七不思議(?)のうちの一つである。

 ちなみに絵本『にちよういち』では、あつこが迷子になるのだが。「麦わらかぶった、6つばあの女の子を見ざったろうか?」「よう分からんけんど、あっちの方へ行きよったにかあらん」このやり取り、私の一番好きな場面であることを付け足しておく。



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