エピソード52:メルシー券

  2021年も残すところあとわずか。つい先日お正月を迎えた様な気がするのに、月日の経つのは早いものだ(大げさ)。しばらく滞っていたこのエッセイも、50号を超えた。正直こんなに続くとは思わなんだ。締切に追われない自由な物書きというのは、気楽な身分ですね

 さて、今年最大のワタシ的ニュースといえば、なんと言ってもコレ。タイトルの「メルシー券」にピンときたアナタ、もうお分かりですね?そう、「内田文昌堂」の閉店。新聞の見出しを見た途端、おったまげた!あんな老舗が店じまいするなんて、高知のお街は大丈夫かね⁉︎

 メルシー券薄緑色をした小さなポイント券である。お会計100円ごとにポイントが付くんだっけか?なんでも高知のポイントカードの元祖らしい。だいたい5点とか10点とかが多いんだけど、たまに50点の大物(?)なんかがあったりして。見つけた時は、レアカード発見したかのごとくワクワクしましたね~。小学生の頃は、財布からメルシー券をチラ見せさせるのがステイタス!「お街でお買い物してる都会的なアタシ」を、密かにアピールしたもんだ(ワタシだけか⁉︎)。

 その頃は大きな文房具屋さんなんてほとんど無かったから、内田文昌堂の品揃えには目を見張るものがあった。ガラスケースに陳列された万年筆の類は、子どもが触れてはいけないような、ただならぬ大人の気品が漂っていた。当時流行っていたファンシーショップとも違う、子どもひとりでは入りにくい、重厚な雰囲気があった。

 中高生になると通学路の途中ということもあり、たびたび友人と寄った。慣れたふうに内田文昌堂で買い物をする友人が、とても大人びて見えたのを覚えている。なぜか彼女は内田文昌堂を、略して「ウチブン」と呼んでいた。そんな業界用語あったのかね?ともかく、同級生にしては自分よりよっぽど「大人」な彼女との距離が、その時だけは少し遠く感じた。

 20211226日、内田文昌堂はその長い歴史を終える。お街の記憶が、またひとつ消えていく。




コメント

このブログの人気の投稿

エピソード104:取材

エピソード101:仙台にて

エピソード99:県営渡船と御畳瀬の町