エピソード41:町内運動会

  以前このエッセイで、社内運動会のことを書いた。今回はその町内会版を書こう。我がT須地区は、全人口1万数千人ほどの大所帯である。運動会は、地域のほぼ真ん中にあるT須小学校で開催される。各地区の選手があらゆる種目で競い合う、町内会活動最大のイベントだった。かつてT須小学校の児童数は1000人を超えており、クラスが足りなくなってプレハブ校舎まで建ったほどだった。まだまだ元気な大人や子どもがたくさんいた頃の話である。

 秋のある日曜日、朝早くから人々が校庭に集まり始める。グラウンドには町内会のテントが丸く並び、アイスクリンなどの出店まで出てお祭り気分を盛り上げている。子どもはもれなく競技に駆り出され、この運動オンチの私も体操服(ブルマだった!)を着て走った。ちなみに我ら「S木東町内会」は、お年寄りの多い弱小チーム。強いのは「O島」や「Mノ丸」だった。だいたい名前からして強そうではないか。しかもそれぞれの地区に割り当てられたチームカラーがあり、強いチームはやっぱり濃紺とか紫みたいな強そうな(?)色だった。これらがハチマキとか団旗となってチームを盛り上げる。ちなみにビリを争う「S木東町内会」のチームカラーは、薄桃色というのは名ばかりの色褪せたピンク。想像してほしい。大の大人が揃ってピンクのハチマキやゼッケンを身につけている姿を。まるで幼稚園の学芸会である。

 競技は全てぶっつけ本番。地面に立てたバットに額を当ててグルグル回り走るとか、バケツの水をお猪口に汲んで一升瓶を満杯にするなど、名もなき競技ばかり。けれどこんな競技だからこそ、普段は着物姿の静かなM地さんも活躍出来る。時代の最先端だったのかもしれない。

 1番盛り上がるのは応援合戦。S木東町内会は、イケイケのI野さんが率いる「力士ダンス」!私は知っているぞ。I野さん家で力士の着ぐるみを着た奥様方が、都はるみの「好きになった人」に合わせてダンスを猛練習していたことを。

 M地さんもI野さんもいなくなって久しい。S木東町内会は空き家ばかりになってしまった。



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