エピソード26:民間療法

  あれは私が土佐清水に住んでいた時のことだから、保育園年長組の頃か。当時は姉弟揃ってひどい鼻炎に悩まされていた。いつも鼻をグシュグシュさせている私たちを見かねた母。どこで聞いたのか、「蓄のう症にはドクダミが良い」という民間療法を仕入れてきた。早速実験台に上る私たち。煎じて飲むのかと思いきや、なんと大胆にも庭でちぎってきたドクダミの葉っぱを丸め、直接鼻の穴に差し込まれるという羽目に!自信満々の母と、両鼻にドクダミを詰めた暗い顔の姉弟の図は、かなりシュールである。子どものことだから、親に文句は言えぬ。そのままの姿で渋々遊びに出かけたものの、周囲からの奇異な視線を振り払うのに必死だった。とは言っても、これはそこそこ毒出しくらいにはなったと思う。

 またある時のこと。九州へ旅行に行った時、私がひどい乗り物酔いをした。ここでも自信満々の母がこう断言した。「ヘソに梅干しを貼れば治る」。一体どこからの情報なんだか。こうして私は、大事な昼食のおにぎりから取り出された梅干しをヘソに貼られるという、なんとも情けない姿にさせられたのだった。当然ながら、こんなことをして乗り物酔いが治るわけがない。ヘソが痛くなるだけで終わった。母よ、私ゃ今だに根に持ってるぞ。

 そんな母だが、子どもの頃にどういうおまじないだったのか、すり鉢を頭に被せられたことがあるらしい。明治生まれの曽祖母の言だったとか。それにしても怪しげな民間療法やらまじないを信じ込んでしまうのは、我が家の統なのか⁉︎すり鉢を被ったおかげかどうか、今でも母の頭はお花畑のままである。



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