エピソード19:社内運動会

   それこそバブル真っ只中の頃。父の勤める会社は、毎年盛大な社内運動会を開いていた。コドモの私も、なんだかよく分からないまま連れて行かれた。というか、ただ単にお菓子に釣られてほいほいとついて行っただけなんだが。

 まず、高知市内の本社前に集合。そして貸切バスに乗り合わせて、四万十町窪川へ。高速道路が無い時代、窪川は地の果てのように遠かった。また昔のバスは、異様に乗り物酔いを催す。タバコの煙がもうもうとする車内、変な模様の座席カバー、意味不明なシャンデリア、既に酔っ払っているおんちゃん達のカラオケ大会…。途中必ずゲーゲーしたものだ(汗)。

 誰がどのように手配したのか、場所は小学校(!)のグラウンド。小学校丸ごと貸し切るなんて、すごい時代だったと思う。華やかなファンファーレと共に競技が始まる。私は「アベック風船割り(完全に死語)」「輪回し」「飴食い競争」などに出場。しかしまぁ、父親と出たアベック風船割りは、風船がちっとも割れないし、輪回しは輪があさっての方向へ逃げて行く。飴食い競争に至っては、飴だと思ってねぶり回していたのが、知らないおじさんの指だった(そのおじさんが飴を口に入れてくれた)。

 応援合戦は、各チームが最も力を入れているイベントだった。突如鳴り物と共に踊り込んで来た全身タイツの一団。カラフルなアフロヘアにこれまた派手な腰みのをつけて、おばちゃん達の前に並ぶやいなや、一斉に腰みのを捲り上げた。なんとそこには、男性の何某を模した作り物が!おばちゃん一同ワッと沸き立ち大喜び!…もう何がなにやらカオスである。

 帰りのバスでは食べきれない程のお菓子を貰い、夢醒めやらぬまま家路に着いた。いつの間にか会社は吸収合併を繰り返し、社内運動会も思い出だけのものとなってしまった。





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