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エピソード11:お婆

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  山を車で走っていて必ず遭遇するのが、「お婆」という種族(?)である。彼女らは決して「お婆さん」でも「お婆ちゃん」でもない。「お婆」としか呼びようがないのである。 理想的な「お婆」の姿はこれだ。  その1・上下柄on柄の服を着ていること。農協(JAではない)で買ったと思われる、なんとも形容しがたいプリントのかっぽう着にモンペを着用していれば最高だ。お婆のコーディネートは想像の斜め上を行く。ペイズリー柄にタータンチェックを合わせたりという自由奔放なそのセンス!なぜ多数ある柄からそれを選んでしまうのかは、お婆に関する永遠の謎である。  その2・頭にはかぶり物をしていること。使い古した手拭いを姉さんかぶりしているのも味があるが、周りにヒラヒラのついたボンネット状のものをかぶっている姿はまことにキュートである。あれはお婆がかぶっているからこそ可愛らしく見えるのであり、ワタシなぞがかぶっていたら気でも触れたのかと思われるだろう。  その3・背の高さは手の中に収まるかのように小さく、身体は「くの字」に折れ曲がっていること。さらに杖(ただの棒)や手押し車などの小道具があれば、お婆のチャーミングさがますます引き立つ。  長年農作業に携わって中山間地域を支えて来たであろう「お婆」。彼女たちに敬意を評して。

エピソード10:U F O

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  なぜ唐突に UFO ー未確認飛行物体のことを思い出したのかと言えば。先日図書館から借りてきた本に、 UFO の話題が出ていたからである。おそらく高知県、いや日本中でも昭和 50 年代以前に生まれた人なら、一度は聞いたことがあるであろうあの事件。高知市東部の介良(けら)地区で少年達が UFO を捕まえたという、いわゆる「介良事件」である。話の真偽はさておき、どうやら昔の高知には怪しげな物体が結構(?)飛来していたらしい。  ワタシの叔父が子どもの頃のこと。高知市西部の朝倉にあった営林署の官舎で、玉虫色に光る飛行物体を目撃したらしい。一緒にいた祖母も同じものを見ており、これは大事件だと某 K 新聞社へ電話したそうだが。「木の芽時によく現れる人」のような扱いを受け、全く取り合ってもらえなかったとか。これがニュースになっていれば、今頃は介良事件と共に有名な UFO のエピソードとして残っていただろうと、悔やまれてならない(大げさ)。  そんな叔父だが、最近になってまた UFO を見たらしい。今度はスマホに撮っているから確かだと。見せてもらったが、空に浮かぶ小さな光点が次の瞬間、かき消すように見えなくなったという代物。やはり UFO 話は、介良事件並みのインパクトが無いとどうも胡散臭いということで。

エピソード9:おすそ分け

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 北に四国山地、南に太平洋を抱える高知県。豊かな自然に恵まれているのは当然のこと。そこでとれる海の幸山の幸は「食べ物が美味しかった県」ランキングの上位に入る実力がある。親戚知人に農業を営む人も多いだろう。休みになれば、海や川では大勢の釣り人が糸を垂れている。  必然的におすそ分けが回ってくるのは、田舎あるある。「おるかね~」と声をかけた時点でもう玄関に上がり込み(知人談)、バケツいっぱいの魚やらコンテナ満杯のミカンやらを勝手に置いて行く。タケノコ・柿などは「また来たで…」とウンザリされるほどだ(いや、ありがたいんですけどね)。  おすそ分けにもバブル(?)があったのか、昔は伊勢エビや松茸なんかを頂いたことも。記念写真を撮っているくらいだから、貧しい我が家にとってはよほど珍しかったのだろう(泣ける)。  ところで、大叔父夫婦がまだ元気だった頃。子どもの私に「もちキビ」を作って持ってきてくれた。それがことのほか美味しく、それを大叔父に伝えたところ、以降私のためだけに作ってくれることになった。艶めく黄色の粒を噛みしめるたびに、じんわりと出てくるほのかな甘みや素朴な味わいは、大叔父夫婦の愛情にも感じられ、一粒一粒大切に頂いたものだ。今でも時々良心市でもちキビを買うことがある。食べるたびに大叔父と大叔母の日に焼けた、懐かしい笑顔を思い出す。

エピソード8:五台山

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   高知市の観光名所のひとつ、「五台山」。四国八十八ヶ所三十一番札所である竹林寺や、高知県立牧野植物園。また高知市内を一望できる展望台など、見所がたくさんあるお得なスポットである。昔は青柳橋の上をロープウェイが通っていたらしい。今も残しておけば、数少ない高知のアトラクションとして楽しめただろうに(かなりスリルがありそうだけど)。  自宅の窓からも見える五台山は、私の人生の一部と言ってもいい。幼少の頃から牧野植物園へは何度もピクニックや遠足に行った。そこそこいい歳になれば、格好のデートコース(!)として、ドライブしたり夜景を見たり。今まで何人の助手席に乗ったかしらん(遠い目)。あの時のあの人達は今何をしてるんだろうか ⁉︎ 。  牧野植物園が新しくなってからは、ますます観光客も増えて華やかになってきた。竹林寺も改修されて、とても気持ちよく雰囲気があるお寺となった。知恵を授ける文殊菩薩がご本尊ということで、受験の時には大変お世話になりました。  この竹林寺、五重塔の近くに「一言地蔵」さんがいらっしゃる。父の病気平癒を祈願したら、ケロリと治ったというお墨付き!…一緒にいた弟は、宝くじが当たるように、なんてお願いしてたらしいけど(何やってんだ)。  晴れた日も雨の日も情緒のある五台山。しかしこの前「こんこん山」を歩いていたら、なんと道端の「ニッケイ」の皮が、手の届く範囲全体剥がされていた!皆さん、マナーはきちんと守りましょう!

エピソード7:雨

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 もうすぐ雨の季節がやって来る。大正生まれの祖母は、梅雨のことを「ながせ」と呼んでいた。古語が由来の土佐弁らしいが、なんとも風流な響きの言葉である。  「高知の雨は下から降る」なんていう笑い話(?)があるけれど、ちょっと強めの雨が降る時には傘などまるで役に立たない。以前県外の知人を車に乗せた時の話。駐車場から店に入るのに傘を差さないまま走っていると、「高知の人は雨でも傘を差さないんですか?」と不思議がられたことがある。いやいや、車のドアを開ける→傘を出す→その傘を差す→ドアを閉める、なんていう一連の動作の内にずぶ濡れになってしまうからですよ。だったら車からダッシュで店へ駆け込んだ方が、よっぽど濡れない。あ、足元は滑るので気をつけるように。  雨を表す擬音語には「しとしと」「ザーザー」とか色々あるけれど、「ダーッ」とか「ドドオーッ」も加えてほしい(もはや雨音とも思えぬ)。水害には慣れっこの高知県民。雨足が激しければ激しいほどワクワクしてしまうのはなぜだろう(不謹慎極まりない)。おっと、くれぐれも増水した川やら田んぼやらの様子は見に行かないでくださいね。  急なスコール(!)に見舞われても、空が明るければすぐ止むことは体に染み付いている。少し雨宿りすればほら、鳥の声が聞こえてきた。そうすればきっと、太陽の光が差してくるはず。

エピソード6:良心市

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  道端にある無人販売店のことを、高知では良心市と呼ぶ。この良心市、非常に効率的な仕組みだと思うのだが。まず、人件費がかからない。市自体も簡素な作りでOK(台風が来たら壊れてた、なんてこともあるけど)。家賃もいらないだろう。朝どれで新鮮かつ究極の地産地消。さらに非対面販売&エコバッグ必須なので、時代の最先端を走っている。特別な技術や設備なしでサステナブル(?)な社会生活が可能。必要なのは「良心」のみ!  良心といえば。母が前に利用した良心市の野菜には、なんとお釣りがくっついていたらしい。しかも誰もくすねていく人がおらず(当然ですが)、大根に20円がテープで貼り付けられていたとか。つくづく高知に住んでいて良かったと思う。  良心市愛用者の頭の中には、どこに何を売る市があるのかという地図が存在している。あそこの田んぼの角はお花が安い、そこの溝の横のほうれん草が良かった、スイカはどこそこの~という具合。ちなみにウチは、市町村越境してまで安いモノを買いに行きます(最遠土佐清水)。しかしスイカとかリュウキュウ(高知の野菜・やたらに長い)とか、とても徒歩や自転車では買いづらいと思うのだが。そういえば小夏や文旦の大袋も、クルマでないと買えないですね。あ、ドライブスルー専門 ⁉︎  高知の生活に密着した大切な文化遺産、良心市。その存続は、私たちの「良心」にゆだねられている。